第2章 「ヘッド軽量化」が進まない理由とは?
【第2回 スタートからおかしい「バランス理論」のヘッド重量】
そもそも「バランス理論」が浸透したのは1930年代。
グランドスラム達成、引退後のボビー・ジョーンズの
クラブをベースにスポルディング社が作り上げた
アイアンセットの影響が非常に大きい。
だが、そこには大きな「間違い」があった。
約200gと重かったヒッコリーシャフト
球聖ボビー・ジョーンズが年間グランドスラムを達成したのが1930年。その使用アイアンをベースにスポルディング社がスチールシャフトでアイアンセットを大量生産。このときレングスは半インチ刻み、番手は数字表記という現代のアイアンセットにつながる基準が出来上がった。
さらに画期的だったのが「バランス理論」を採用したことだが、シャフトがスチールになったことで重量管理が可能になったことから実現したといえる。
ベースとなったボビー・ジョーンズのアイアンを計測したところ、8番アイアン以外はほぼ揃っていたとのこと。ジョーンズは、8番だけは扱いにくかった、とのコメントも残している。
そのアイアンのバランスをベースにしたわけだが、ジョーンズのアイアンはヒッコリーシャフト。スチールよりも約70gも重いものだったのだ。
ジョーンズのアイアンヘッドは相当軽かった
つまり、スポルディング社のアイアンは、ジョーンズのアイアンよりかなりヘッド重量が足されていた可能性が高い。静的なバランスを合わせた場合、動的モーメントではシャフト重量よりヘッド重量のほうがはるかに大きく影響する。総重量(シャフト)が軽いので振り上げやすくなる代わりに、ダウンではヘッドの動きをコントロールしにくくなる。慣れれば飛距離は伸ばせても、操作性が損なわれるのだ。
また、アンティークなどでヒッコリーシャフトのアイアンを見たことがある人ならわかると思うが、ヘッド自体はペラペラに薄いが、ヒッコリーにかませるホーゼル部分はかなりボリュームがある。ホーゼル部分を差し引いたヘッド重量を考えると、実質的に現代のヘッドより20g以上は軽かったはず。ジョーンズの感性、ショット精度に近づく仕様としては「大間違い」だったと言えるだろう。

