第1章 疑うべき「コモンセンス(常識)」とは?
【第4回 アイアンの易しさは「スイートエリア」ではない】
プロ・上級者向けモデルは難しい、というのは過去の話。
今やプロでも易しさと安定性を優先するのが常識。
ドライバーなら大型ヘッド、軽量シャフトを選んでいる。
だが、アイアンはマッスルバックに根強い人気がある。
マッスルバック、実は「易しいアイアン」なのでは?
プロはなぜフルキャビティを選ばないのか
プロは極力「易しい」クラブを選ぶ。ドライバーは振り回しやすく、多少の打点のブレでもフェアウェイを狙えるもの。
ヘッドMOI(慣性モーメント)が大きく、いわゆる「スイートエリア」の広い大型ヘッドに、50~60g台のシャフトを装着して、300ヤード級のドライブを実現するのが当たり前になった。
では、アイアンも「スイートエリア」を広げたキャビティバックにして、弾道安定性を増せばいい――とはなっていない。
いまだにマッスルバックタイプのヘッドを選ぶプロは多い。
実は、スピンコントロールと打感調整では、キャビティバックには「スイートエリア」の拡大以上のデメリットがあるからだ。
打点の肉薄化による弾き感、高重心化、重心距離の伸びなど、操作性を損ねる要素が増えていく。
だからプロは、長い番手でも「ハーフキャビティ」といった、中間的なモデル選びに留まっていることが多い。
ロフトとバウンスが易しさのキモ
大体、アイアンの打点はトウ・ヒール方向にはプロアマ問わず、それほど大きくはブレない。
ミスの大半はフェース向きのコントロール不足であり、ライ対応にしくじった上下方向の打点ブレである。
厚く入る、薄く当たる。ダフリとトップだ。
だから「スイートエリア」が上下左右に広いよりも、単純に低重心設計のほうがミスは少なくなる。
さらに言えば、ロフト角が大きいほどボールを拾いやすく、易しい。
そしてソールの抜けが良くなる適度なバウンスがあるほど、アイアンは厚く入るミスに強くなる。
だからプロは、ソール形状にこだわる。
抜けの良さが、本当の易しさの目安となる。
『ブレイクコモンセンス』の中空構造は「スイートエリア」の拡大が主目的ではなく、ヘッド軽量化の中で重心位置の高さ・深さの適正化、ソール幅の確保を意図したもの。操作性最優先の設計なのだ。

