第1章 疑うべき「コモンセンス(常識)」とは?
【第1回 なぜアイアンは「易しくなってくれない」のか】
ここ40年でドライバーは驚くほどの進化を遂げてきた。
新素材の投入などで更なるロングドライブの可能性を広げ続けている。
だが、アイアンはどうだろうか。特にプロが好むモデルほど、40年前とあまり変わり映えがしない。
実際、実感できるほどの進化が感じられない理由とは?
「飛ぶアイアン」は易しくなっていない
古くから語り継がれるゴルフの理想の1つに「Far and Sure(遠く、正確に)」というのがある。
ゴルフクラブの開発・進化も、大局的にはここを目指しているのは間違いない。
ドライバーで見てみると、ヘッドスピードアップ=長尺化×軽量化、ミート率と方向性アップ=ヘッド大型化×MOI(慣性モーメント)
アップにより、40年前のパーシモンヘッド×スチールシャフトから現在のチタンヘッド×カーボンシャフトへの移行で、ツアープロの平均飛距離は
30ヤード以上も伸びている。「遠く、正確に」のポテンシャルは確実に上がっているのがわかる。
では、アイアンはどうだろう。アイアンも40年前に比べて飛ぶようになった。昔はカネの5番で150ヤード、今は7鉄で150ヤード。
ただ、飛ぶようにはなっているが、今の5鉄は昔の3番並みに打ちこなすのが難しくなっている。
これは進化と言えるのだろうか。
「ロフトを立てて飛ばす」は進化ではない
アイアンの場合「遠く、正確に」は「キャリーで遠くに運べて、正確に止められる」ようにするのが開発・進化の王道と言える。
ショートアイアンなら少しロフトを立てて、少しシャフトレングスを伸ばせばより遠くまで運べるようになる。
だが、それは実質的に番手数字を「8」から「9」に書き換えただけにすぎない。
それそれでもユーザーは喜んでそれを選択する、というのがクラブ業界の「コモンセンス」らしい。
だが、「運んで、止める」弾道高さとスピン量はヘッドスピードに見合ったロフト角がないと生み出せない。
だから、5番が打てなくなる。ロングアイアンだけでなくミドルアイアンもユーティリティに置き換えればいい、という流れは「4」を「5」に書き換えても打てないことの誤魔化しでしかない。アイアンの本質的な進化は、ストロングロフト化から離れた「運んで、止める」の追求のはずだ。